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2015年 05月 14日

汚れたパンツと鹿の女

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山に分け入って今日で2週間が経つ。

8日目に一度、補給のために街へ降りた。
トレイルヘッドから林道を1時間歩き、さらにバスで1時間。
その車中、俺の薄汚い恰好は、決して多くは無い乗客にとって格好の暇つぶしになったはずだ。
途中、「日帰り温泉」の看板が目に入る。思わず停車ボタンを押しそうになるが踏みとどまった。

俺は汚れるために旅をしている。

街の蕎麦屋で腹を満たし、1週間分の食料を調達したらそれ以外何もすることが無く、またバスに飛び乗り山へ戻った。すでに街に俺の居場所はなかった。

30年前の山行記録から想像し探し当てた山道。その道とは言えないほど荒れ果てた道もこの沢で終わっていた。あとは沢沿いを少し下るとガイドブックにも載っている立派なトレイルにぶち当たる。
タープを張り荷物を整理すると何もやることが無くなってしまった。
すると対岸に雌鹿が現れ草陰から俺の顔を凝視していた。

彼女は言った。

「みんなは嫌いって言うけど、私は好きよ。人。」
「そうか、君は昔、人だったのかもしれないね。」
「あなたは、鹿だったかもしれない。」
「あるいは、僕達は熊だったかも。」
「人も鹿も熊も、人が勝手につけた呼び方にすぎないけれど。」

俺は目を閉じて1回深呼吸をし、目を開けた。
対岸の雌鹿は、姿を消していた。そのかわりに俺の隣には綺麗な黒髪の白い肌の女性が座っていた。

「俺、臭わない?」
「正直臭うわね。でも、私、その匂い好きよ。」

沢に沿って突然強い風が吹く。静かに揺らめいていた木々が突然ざわつき、何枚かの若葉が風に舞った。彼女は風と共に消えていた。

俺は汚れるために旅をしている。

思い立った俺は履いていたトレッキングパンツを脱ぎ沢で丁寧に洗った。染み込んでいた泥が洗い流され、本来の色が姿を現した。きつく絞った後、丁寧にしわを伸ばし適当な枝にかけて干した。

夕食の準備をするにはまだ早い。俺はクッカーに沢の水を汲み火にかけ、インスタントコーヒーを淹れた。コーヒーを飲みながら持ってきていた『モカシン靴のシンデレラ』を読み始めた。
開拓者の白人から『シンデレラ』の話を聞いた、北米先住民・ミクマク族がそこに登場する、着飾ることでしか自己表現できない女(シンデレラ)と見た目の美しさでしか相手を評価できない男(王子)の、その薄っぺらい思考に対する、アンサーストーリーと言われている。

汚れることは恥ずかしいことじゃない。汚れなんて一瞬で洗い流せる。むしろ、綺麗であることよりも、汚れること、そして、その汚れる過程こそ評価されるべきなんだ。

本を閉じ、ぬるくなったコーヒーを飲みほした俺は腰を上げ、干してあったトレッキングパンツを履いた。パンツは既に乾いていた。

綺麗になったパンツだが、その汚れは俺の目にはしっかりと見えていた。良い旅だった。街に戻ろう。

なんて、妄想も浮かんでくるアウトドアリサーチのトレッドウェイパンツお勧めです。合わせるベルトは、パタゴニア好きなら見逃せないカラーリングのこれで。

最後に。サマリーの乱れは生活の乱れ!区切りよく6月から再開しようと思う。
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by cossycossy | 2015-05-14 21:50 | ギア